私は24歳の時に日本の商社の香港現地法人駐在員として香港に送り込まれ、自分のキャリアをスタートさせました。 
当時まだ、繊維のこと、ファッションのこと、縫製のこと、ビジネスのこと、世の中のこと、営業のこと、政治のこと、何もわかっていなかったです。

それでも 親会社の本社や各支店からは、多くのお客様が香港に送り込まれてきました。  
1ヵ月間 毎日、途切れることなく日本からの来客がありました。
送り込まれるお客様の要望をこなしていたら、仕事も売り上げも急激に増えました。
お客様はまじめに仕事をすることを目的としている方もいらっしゃいましたが、香港で接待を受けることを楽しみに、”接待が一番の目的で、仕事は二の次” のような方も多かったことは事実です。
接待は連日続き、それが自分の仕事であり、責任だと信じていたと思います。
そして、接待の多さはそのまま売り上げ増へとつながっていきました。
今から思えば、頭脳はあまり使わず、体力勝負の仕事でした。

余談になりますが、仕事とは関係がないのに、お客様が愛人を連れて香港に来たり、本社の役員の娘さん達の卒業旅行の相手をさせられたり等ということも多かったです。なんでもありの駐在員でした。

その後転職をして、欧州とのビジネスが始まりました。 
当初 私はヨーロッパのお客様も香港まで出張に来られたら、きっと美味しいものを食べたいだろうし、美味しいお酒も飲みたいと信じ込んでいました。
お客様とはそういうものだろうし、売上げを増やす為に接待は欠かせないと信じていました。
しかし、欧州から来られるお客様との商談が終わった後、お客様を食事に誘っても、ほとんどの場合、断られました。
日本相手に仕事をしていた時とは様変わりでした。 
ある時、フランスの大手のお客様に言われました。
『Hiro(お客様はわたしのことをヒロと呼んでくれていました)、あなたはビジネスパートナーだけど、プライベートの友人ではないです。なので私はHiroと5時までしっかりビジネスをしました。今はもう5時を過ぎたから、私はプライベートの時間を1人で自由に過ごさせてください。』
わたしは顔面を殴られたような衝撃を感じました。
これが日本とヨーロッパの文化、価値観の違いなんだと、遅ればせながら初めて気づくことができました。 
そこまではっきりと言われたことはあまりなかったのですが、そのお客様には、はっきりと教えて頂いて今でも感謝しています。

文化の違いはあれ、中には私とのプライベートの時間を過ごしたいと考えて頂いているヨーロッパのお客様も少しはいらっしゃいます。
なので、ヨーロッパから来られたお客様には、今は軽く食事を誘うようにはしていますが、強くお願いすることはしていません。
一緒に食事をして下さるお客様も10~20%程度はいらっしゃいます。
大半のお客様は接待お断りです。
一緒に食事して頂くお客様も、食事だけで終わりです。
日本人のように2件目、3件目ということは無いです。
接待一つを取ってみても ヨーロッパとアジアでは180度考え方が異なります。 
私は 香港、ベトナム、中国、台湾、日本、韓国、インドネシア、ミャンマー、カンボジア、タイなどアジアでも仕事をしてきましたが、接待文化というのは東アジアに顕著にみられる商習慣のようです。

ごく稀に、ヨーロッパのお客様の自宅にまで呼んで頂き、ホームパーティーや誕生日パーティーに参加させてもらうことがあります。 そこまでいけば、もう仕事でも、プライベートでも大切なパートナーと認められたということになります。